ホテルP&L例
P&L計算書からホテルの収益性を読み解く方法
ホテルの財務実績を把握するには、貸借対照表と、損益計算書 より一般的にはP&L計算書)の徹底的な分析が必要となります。 STRとの会話においては、
多くのホテル経営者にとって、損益計算書の読み解きは難しい場合がありますが、これは全体の収益性に影響を与える要因を知るための極めて重要なステップです。弊社のホテルP&L事例は、この作業が少しでも容易になるよう設計されています。なぜなら、収入と経費の関係、そして各部門が特定の期間にどのような業績を上げているかを理解すれば、より効果的に戦略を立てることができるからです。
トップライン(売上)の項目だけでは全体像は掴めず、最も有益な知見は、むしろボトムライン(最終利益)から得られます。多くのレポートやデータセットと同様に、コンテキストが非常に重要です。ボトムラインのパフォーマンスを前年や競合他社と比較するために、コンテキストは欠かせません。これらのP&L計算書の事例では、ホテルAとホテルBをテスト対象として取り上げます。
*米国ホテル統一会計報告様式(USALI)第11版に基づいた事例
部門ごとのホテル収益
損益計算書(P&L)は部門別に内訳が分かれています。当然ながら、客室売上高が最大の収益源となっており、この傾向はこれから見る2つの事例ホテルでもはっきり示されています。
両ホテルとも客室売上高が占める割合は同じですが、その他の部門の貢献度を分析することで、それぞれのホテルの収益ドライバーをより深く理解できるようになります。ホテルAは、敷地内に複数のバーやレストランがあるため、料飲(F&B)部門からの収益の割合が大きくなっています。一方、ホテルBはルームサービスのみの提供であり、同部門からの収益は少なくなります。
部門ごとのホテル経費
しかし、ホテルAがレストランを運営し、ホテルBがルームサービスしか提供しない場合、これは経費、そしてより重要な収益性にどのような影響を与えるでしょうか?
以下の表が示す通り、料飲(F&B)コストはホテルAの経費の遥かに高い割合を占めます。これは、ホールやキッチンスタッフの人件費が増加することに加え、食材やF&B消耗品の原価が高くなるためです。一方、ホテルBの経費は、ルームサービスのみのモデルのため、料飲(F&B)事業の規模が非常に小さく、ホテル全体の経費に与える影響は遥かに小さくなります。このように、収益性の水準は、収益と経費の間の関係に依存していることがわかります。
ホテルの人件費
ゲストエクスペリエンスはホテル経営者にとって極めて重要であるため、料飲(F&B)施設には適切な数のスタッフを配置し、質の高いサービスを提供することが大切です。このため、料飲(F&B)部門の人件費は他の部門に比べて高くなります。ホテルのダイニングを円滑に運営するために、より多くのスタッフが必要とされるからです。
収益性の観点から見ると、稼働率の変動は、宿泊客数に対するスタッフ数のバランスいう課題をもたらします。ホテルが販売可能客室一室あたり人件費(LPAR)をいかにうまく管理できるかが、収益性に大きな影響を与えます。以下の表が示すように、ホテルBは販売可能客室一室あたり人件費(LPAR)をより効果的に管理しています。
未配賦費用
これらの部門は顧客と直接接することがなく、収益に直接貢献することはありませんが、他の部門をサポートするという点で不可欠です。未配賦費用には、マーケティング、情報通信システム(IT&S)、施設運営・維持管理などの部門が含まれ、収益性において興味深い役割を果たします。
例えば、ホテルAはテクノロジーへの投資を進めており、情報通信システム費用が高くなっているのかもしれません。一方、ホテルBのスパ施設が施設運営・維持管理コストを押し上げている可能性もあります。収益性のデータを分析することで、ホテルはこれらの費用が全体収益に与える影響と、収益性向上のために提供し得る潜在的な機会について、情報に裏付けられた知見を得ることができます。
ホテルA対ホテルB – 収益性はどうか?
すでに議論したように、ホテルBは人件費の管理がより効果的であり、これにより、収益をより効率的に利益へと転換できています。以下の画像が示す通り、ホテルAの方が収益は高いにもかかわらず、ホテルBはより大きい営業総利益(GOP)マージンを達成しています。これは、ホテルBのフロー・スルー(売上を利益に転換する力)が高いためです。
ここで重要なのは、競合他社や市場がどのような業績を上げているかを知るためのコンテキストを持つことです。ホテルBにとって、自社のGOPマージンが懸念すべき点なのか、称賛すべき点なのかを判断するには、それ単独では困難です。同じことがホテルAにも当てはまります。競合のパフォーマンスを見る前は35.0%のGOPマージンに満足していたかもしれませんが、この比較によって考えが変わるかもしれません。
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